ピアニストからだ理論 <17>
からだの不思議 “解剖学のお話し”
「若き娘への手紙」より
*2011~2014年まで”ameblo.jp/sinfonian/"内で「演奏のための機能解剖学」としてご紹介していた中からの抜 粋です

「若き娘への手紙」
カール・チェルニー著 中村菊子/渡辺寿美子訳 全音楽譜出版社
あまりにも有名な本ですが、ピアノの学習資料として貴重なものですので改めて内容を見直してみます。今回は「若き娘への手紙」から~レッスンの基本条件について~より抜粋です。”演奏姿勢”についてチェルニーのアドヴァイスが書かれてあります。ピアノをはじめて間もない方や、姿勢が悪くなりやすい方、癖がついてしまって矯正中の方は学習の手助けになるのではないかと思います。
以下、本文からの抜粋となります。
・・・・私は時折手紙を書いてレッスンをすることにします。あなたがより熱心に勉強をすることを促すとともに、勉強の手助けとなる事項にあなたの注意を向けさせ、上達を早めることを私は自分の勤めとして喜んで引き受けましょう。
中略
あなたはまず何よりも先に、正しく、優 雅にピアノに向かって座ることを身につけてください。椅子は両手を垂らしている時、ひじがピアノの黒鍵よりちょっと下になるぐらいの高さにしてください。
また、いつも鍵盤の中央に向かって、腕は、ひじの先が肩より少し鍵盤に近い位置に保ってください。すわる位置と同様に大切なことは、頭から肩、胸にかけての美しい姿勢です。背中が曲がっていても、また、まっすぐに硬くなりすぎてもいけないのです。
中略
すわり肩が悪いと、のびのびとした気品のある演奏姿勢の発達をさまたげるばかりか、それを阻止します。腕の前部(ひじから指にかけて)は完全に水平でなければなりません。鍵盤上の指先は、親指の頭に揃えてゆるやかに一本の線を描くようにまげられてなければいけません。そして、いつも指のやわらかい肉の部分を使って打鍵し、爪や、指の平らな部分で打鍵するようにします。
黒鍵をひく時は、少し指先を伸ばさなければなりませんが、その場合は、指先は必要なだけのばすようにしてください。打鍵は指だけで行われます。強く打ち付けるのではなく、1つ1つの鍵盤をしっかりと下までおさえてひくのですが、手や腕が不必要な動きをしないように気をつけなければなりません。
親指は、いつも側面の狭い部分でひき、指先はほんの少しまげた状態に保ちます。
白鍵は前方の広い部分の真ん中を、黒鍵は先端近くをひくようにします。どの鍵盤もはじいたり、斜めにひいたりしないように注意してください。1つの指が1つの鍵盤をひいている間、他の指はまげた状態で鍵盤の近くに楽に浮いているように用意しておかなければなりません。なぜならば、続いてひかれる音は、打鍵される瞬間より前に鍵盤をさわってはいけないからです。
指の中で一番大事なのは、親指です。親指は決して鍵盤より下が らないように。むしろ黒鍵の表面より高めぐらいに用意して、その位置から打ち下すように弾くのです。
続く・・・
本を読んでいると、文章だけの説明ではわかりにくい部分もあるかとは思います。「言葉の意味」をよく吟味することが大事です。姿勢に関わる注意事項としてチェルニーのアドヴァイスも知っておくとよいのではないでしょうか。演奏姿勢に関する本は他にもありますので何冊も手に取ってみることをお勧めします。
セラピスト林美希
著書「よくわかるピアニストからだ理論」(出版社ヤマハミュージックメディア)の中で解剖学について執筆させて頂きました。ピアニストの方やピアノ指導者、ピアノ研究家、熱心なピアノ愛好家、調律師等皆様のお役に立てれば幸いです。