ピアニストからだ理論 <15>
からだの不思議 “解剖学のお話し”
「手の解剖学」
*2011~2014年まで”ameblo.jp/sinfonian/"内で「演奏のための機能解剖学」としてご紹介していた中からの抜粋です

人の手を見ると、その人の仕事や手からわかる”生活史”のようなものを見ることができます。ピアノを弾く人の手にも、その歴史が刻みこまれているような気がします。どちらかと言えば、ピアノを弾く人の手の関節はゴツゴツしていて、手全体は筋肉がついて少し丸みがあるような人が多いのではないでしょうか。白魚のような手(?)の人にはあまり出会ったことがありません。今回は手の解剖学を大まかに見て行きます。私達の手は、普段どのように使われてい るでしょうか。主な動きは、
つかむ
にぎる
つまむ
投げる
押す
叩く
これらの動きは、筋肉が作用しているので手は”運動器官”だと多くの人は思っていますが、前回の記事でも書きましたが、手は”感覚受容器”としての働きも大きいのです。手で何かに触れて、それが何であるかを探索できるわけですね。外環境の情報を収集できる感覚器官という側面もあることを忘れてはいけません。
ピアノを弾くときに筋肉の動きだけを意識するのではなく、指先の受容器としての働きも大変に大きいわけですから筋肉を使う運動器官としての働きと、ものに触れたときの感覚受容器(器官)としての機能を同時に使われていることを思い出してみて下さい。そして、この2つの機能が別に使い分けられることはほとんどないのです。
普段の生活やピアノを弾く際にも、手を自由に動かすことができるのは、神経の働きが手と脳を仲介する働きをしているからで脳からの指令によって筋肉が収縮して動くというわけです。手を上手に動かすためには、脳を上手に使う必要があります。脳には、外界の環境情報を処理する構造があるということです。人の手をパッと広げて眺めてみると、前腕(肘から手首まで)とその先に、手の平(手掌:しゅしょう)と5本に分かれた指という具合になっていますね。手の支柱になっているのは、27個の小骨です。

それぞれの小骨は、互いに関節で連結され動きやすくなっています。手の骨は、大きく3つにわけて覚えると良いと思います。手首から、手根骨(しゅこんこつ)、中手骨(しゅうちゅこつ)、手指骨(しゅしこつ)となっています。上記の図で確認してみてください。それぞれの骨の名前は、図を見ていただくか、ピアノを弾く手(5)を参照して下さい。
手の平=手掌(しゅしょう)の中にあるのが、チューブ状になった骨(第1~5中手骨)で、その先には、指骨(しこつ)が続いています。指骨は、人指し指から小指までは、付け根から、基節骨、中節骨、末節骨の3個ずつあり、親指は真ん中の中節骨がありません。
セラピスト林美希
著書「よくわかるピアニストからだ理論」(出版社ヤマハミュージックメディア)の中で解剖学について執筆させて頂きました。ピアニストの方やピアノ指導者、ピアノ研究家、熱心なピアノ愛好家、調律師等皆様のお役に立てれば幸いです。