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ピアニストからだ理論 <21>

からだの不思議 “解剖学のお話し”
「科学的な知識による練習の効果」

*2011~2014年まで”ameblo.jp/sinfonian/"内で「演奏のための機能解剖学」としてご紹介していた中からの抜粋です






*レオナルド・ダ・ヴィンチ解剖図 イタリア・ルネサンス期の万能の天才と言われた。 多くの人体解剖図を描き医学的にも非常に優れていたとされる。
*レオナルド・ダ・ヴィンチ解剖図 イタリア・ルネサンス期の万能の天才と言われた。 多くの人体解剖図を描き医学的にも非常に優れていたとされる。


ピアノの演奏する、という行為(=運動)についてですが一度身体的なレベルに限定して考察してみることをお勧めします。その理由のひとつに、親指の誤用があります。1つ前の記事で指はどこから動くのか?支点となっている部分はどこか?を書きましたが特に親指の支点がどこなのかを知らない人が圧倒的に多いのです。趣味の方であれば仕方がないのですが、音楽学校へ行っている現役の学生でさえ知らないことはめずらしいことではありません。音楽学生が知らないということはそれまでに指導されたことがない可能性が高いと言えます。ピアノを演奏するということは、身体的にとても複雑な運動を伴っています。テクニックの問題に関係がありますが、どのように身体が演奏に関与しているかという点について正しい知識を持ち合わせておくことは大変に役に立ちますし重要なことです。


どのように身体が関連しているかというと、勿論、指だけではなく、前腕、上腕、肩、背中、腰といった多くの部分が演奏に参加してしています。特に、演奏することを仕事としているコンサートピアニストの場合には、非常に高いレベルでの正確さ、スピード感覚、デリケートさ、精密な動きが要求されますからより高度で洗練された運動能力を備えていなければならないでしょう。ピアノ演奏には運動選手と似たような側面がありますが、それに加えて芸術を表現するという難しさもあり、演奏(テクニック)には多くの身体運動との深い関係があることは事実ですから身体レベルでの科学的な知識について理解しておかなければならないと思います。ピアノをはじめたばかりの導入期の小さい子供には、身体についての知識を理解させるのは難しいですが、解剖学などの専門用語をやさしい言葉に置き換えて伝えることは可能ですから、小学生のある時期からは身体的なお話を交えてのレッスンを是非導入していただきたいと思います。


例えば、筋肉のお話についてどのような働きをしているかを、収縮と弛緩と言ってもなんのことやら全くわからないでしょうから、力が入る、そして、ゆるむ、緊張、リラックス、など理解できそうな言葉をあらかじめ準備をしておき、レッスンでの生徒さんの反応を見ながら言葉を選んでイメージをさせてみてはどうでしょう。筋肉が何なのかわからない年齢であれば、身体の中身(内部)、という言葉でもよいと思います。実際は見ることのできない身体の中のお話ですから、まずはやさしい言葉からイメージできる身体感覚を経験してもらい、そして、科学的な知識へ少しずつ理解ができるように仕向けていきたいものです。大人になってもテクニックが安定していないというのは、小学生中学生あたりのトレーニングが間違っていた場合が多いようです。今まで指導してきた中で受講生に話を聞いてみると、ピアノを弾くときに身体を何をしているのか?というメカニズムについて一度も意識をした経験がなく、教わったこともないと言います。


ピアノ演奏で使うテクニックと関連させながら、身体を正しく使うことを子供のうちから少しずつでも意識できるように指導する側もそのことには充分に注意を払う必要があります。大きな音を出そうとすると腕で弾いてしまう子や、弾いているうちに肩が上がってきてしまう子、指が寝たままの状態でぺたぺたと鍵盤を弾いている子には、毎回のレッスンでどのようにして身体を使ってピアノを弾くのか、意識を向けさせる内容にしなければ、結局、音楽を表現するためのテクニックは洗練されたものにはなりませんし、指導者がしつこいくらいに言い続けなければ子供に認識して貰うのはとても難しいのです。間違った身体の使い方でピアノの練習をすれば、長い年月をかけて悪い習慣として彫り込まれてしまいます。それがどんなに残念な結果になるかということを、おそらくピアノの指導者であればご存知のはずです。ピアノを習う側は、そのような問題の大きさにほとんどの場合全く気がついていません。


身体の動きや感覚に意識的になるような練習が習慣化されれば、腕や肩など身体に力が入ったままの演奏を防ぐことは可能ですし、一度このような事実が分かってしまえば、上手く身体を使えていないテクニックの練習の時には、学習者自らが様々な試みをするようになっていきます。親指の支点のお話に戻りますが、レベルの高い音楽大学の学生でも親指がどのようにして動くのか、ということを知らない、習った覚えがない、という割合は驚くほど多いのです。彼らは決して素人ではないわけですが身体の使い方について、考えたこともなければ、意識をしたこともないと言うのです。私が学生だった時代から約20年ほど経ちますが、あまりその頃とは大きな教育の変化がないような気がします。少なくとも、演奏に関わる身体についての教育はヨーロッパ諸国よりも数十年遅れていると思いますし、ヨーロッパの主要な音楽大学の教授陣がこのことを随分前から指摘してきたにも関わらず、未だに大きな教育改革はされていないようです。


身体の中でどのようなことが起こっているのか、何故弾きにくいのか、思った通りに指がなめらかに動かないのか、イメージ通りの音が作れないのか、などの原因の追求をしなければならないのですが、身体的な側面からの考察をするということを一度もしたこともなく、解剖学などのピアノを弾く上で最低限知っておかなければならない基礎的な知識も充分にないため、またどのように勉強すればよいのかわからないために、彼らは自分の身体について検証することができず、ピアノの前で迷いながらただひたすら機械的な練習に多くの時間を割いているようです。ピアノ演奏に関連する身体に関する書籍も近年では見かけるようになりました。例えば、アレクサンダー・テクニークの本を1冊でも手に取ってみれば、解剖学的な内容が書いてあります。さらりと読んだくらいでは最初はわからないことが多いかもしれませんが、何度も読んでみる、あるいはセッションを受けてみれば個人差はありますが身体的に何かしらの気づきはありますし、解剖学的な知識も知っておいたほうがよいだろうか、という考えも浮かんでくるのではないでしょうか。


漠然とした練習を行うよりも、科学的に検証しながら体系的な運動のメカニズムを学ぶことは効果的なピアノの学習が可能になりますし、ピアニスト特有の怪我などの身体に関する深刻な問題から遠ざけることもできます。ピアノ学習に身体的な知識が必要なのか、どうかという質問を受けることがとても多いのですが、それは全く関係のない分野の話という認識からそのような質問になっているのではないかと思っています。音楽を表現するということはあくまで芸術ですから、身体の運動という行為のみを考えて演奏することはできません。ですが、音楽(芸術)と解剖学や生理学などの学問が全く関係のない、本質的に異質なものであるとは言い切れないのではないでしょうか。身体のメカニズムとテクニックとの関連を知らずに、どのようにして音楽を表現することができるのか、漠然としたイメージや感覚だけでは音楽を表現するには限界があるのではないかと、私は思います。

身体的メカニズムを理解すれば、練習の内容が今日から変わります。充実した内容にすることができます。ただの指の練習ではなくなります。



なぜなら、今まで知らなかった身体についての知識があることで一人の練習のときに、その知識を手がかりにして、今、自分は何をやっているのか?指はどのように打鍵しているか?手首の高さは?腕の位置は?全身を使えているか?硬くなっていないだろうか?鍵盤の下りて行くスピードはどれくらいか?など、今まで意識していなかったことをするようになり、音楽を表現する身体のことをしっかり考えられるようになり、その人の中で意識改革が起こるのです。科学的な知識による練習の効果は計り知れません。身体全部の勉強をするのはとても大変ですが、まずは手や指、腕などから1週間に1回でもそのような勉強をする日を設けて少しずつでも知識をつけていけば、半年、1年後、2年後、3年後の演奏には、明らかに音質の変化や音の色彩が豊かになっていると思います。

演奏する身体に関心を持ち、ピアノ練習が身体についての知識に基づいた内容で行われれば、今よりもはるかに効果的で、効率よく、時間を節約し、怪我もなく、そして音楽的な演奏が可能になります。



セラピスト林美希





著書「よくわかるピアニストからだ理論」(出版社ヤマハミュージックメディア)の中で解剖学について執筆させて頂きました。ピアニストの方やピアノ指導者、ピアノ研究家、熱心なピアノ愛好家、調律師等皆様のお役に立てれば幸いです。

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