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ピアニストからだ理論 <16>

からだの不思議 “解剖学のお話し”
「親指について」

*2011~2014年まで”ameblo.jp/sinfonian/"内で「演奏のための機能解剖学」としてご紹介していた中からの抜粋です






*レオナルド・ダ・ヴィンチ解剖図 イタリア・ルネサンス期の万能の天才と言われた。 多くの人体解剖図を描き医学的にも非常に優れていたとされる。
*レオナルド・ダ・ヴィンチ解剖図 イタリア・ルネサンス期の万能の天才と言われた。 多くの人体解剖図を描き医学的にも非常に優れていたとされる。


親指は、見た目にも他の4指と違いがあるように解剖学的にも異なりますのでやはり区別して考える必要があります。



(解剖図:アイリスより引用)
(解剖図:アイリスより引用)

親指(母指)他の4指とは異なるいくつかの点を挙げてみましょう。


【1】親指の第1中手指節骨は、他の関節よりも大きい

【2】親指の関節包は、他の関節よりも緩んでおりほんのわずかな軸回旋も可能

【3】2つの種子骨が手しょう筋膜に埋め込まれており、腱が付着している。


親指は、他の4指よりも器用に俊敏に力強く動くのは、解剖学的に観察するとその理由が次第にわかってきます。他の4指とは違って、手掌の横で沿うような動きもできますし、手掌の中(他の指の下へくぐらせる)への動きも可能です。この可動域の広さは、親指の中手骨が他の4指よりから自由になっており、靭帯で結びつけられれていないためです。

親指の扱いで常に議論になるケースとして、スケールで親指を”くぐらせる派”と”くぐらせない派”の議論です。これは、どちらが正しい言い切るのはとても難しいのですが、解剖学的に考えると、くぐらせない派に一票です。たしかに、親指は他の4指とは異なり、手掌の中へ入り込む、潜り込むような動きが可能な指で、大変に器用で可動範囲の広い指には間違いありません。ただ、ピアノの打鍵という動作という運動をで考えると、手掌に潜らせてしまっては、最も力強く、動きの範囲が広い親指の本来の特性を最大限には活用できなくなります。


ほとんどのピアノの演奏法の本には、”親指をくぐらせる”と書いてありますが、くぐらせることによって生じる問題点については、ほとんど触れられていることがなく残念ながら解剖学的な視点での考察もされていません。ピアノ学習者の多くの人は、親指はくぐらせる、と習っていると思います。親指を使う際の動かし方、ポジションの取り方、微調整の方法、また前腕や上腕、肘の角度や回転軸などについても一切考慮せず意識されることがないのは、備わっている体の機能を使っていないわけです。

親指が手掌の中へ入り込むことで、結果として、音楽の流れの中で流動的に動く親指が担当する音にアクセントがつきやすくなりますし、コントロールが不確実になり、適切な音価を保つことや強弱のムラが出る危険性が高まります。

ピアノの弾く場合には、どの指の動きも妨げることのないように、親指は手掌の外側での動きが自由に行われ、親指がどんな音楽的な動きにも対応できるように手首がt軽度な高さに保たれ、緩んだ状態でいるのが解剖学的には正しい位置であり動作となります。


個人的にですが、このような動作で演奏している見た目にもわかりやすいピアニストとして、フジ子ヘミングさん(本名:イングリッド・フジコ・フォン・ゲオルギー=ヘミング Ingrid Fuzjko Von Georgii-Hemming)の演奏動作を思い出します。彼女の親指の打鍵動作と、それと関連して動く手首、前腕、上腕の見事なコーディネートされた俊敏な動きは、訓練の賜物ではないかと思います。機会があれば動画などで観察してみてください。

親指が、唐突な動きではなく、正確で、鍵盤に自由に落下できる動きは、親指から前腕の内側のラインがやや真っすぐになるようなポジションになります。重要なことは、個々の指に適したポジションに打鍵直前までに移動させてやらなくてはいけないのですが、親指は他のどの4指よりも解剖学的な位置上の特徴があるので、親指の打鍵のときには、手首の位置(下げ気味)、それに繋がる前腕、肘、上腕の位置の微調整が欠かせません。


多くの場合、音形を読み取り、音楽的に求められている表現に合わせて、動きの微調整をしなければならないのですが、大抵、不十分のままに演奏をしているので、弾きにくさや音ムラがあり、伸びやかで美しく歌う音を出すことができません。この微調整は、あまりにも緻密で、個人的な感覚でもあり、指導者からその詳細をすべからく習えるという質の問題ではありません。

微調整の方法は、理論的に解決できる部分については指導できても、他人の体の内部の感覚までは、どんな優れた指導者であっても、感覚的なことや感じ方などはわかるはずもありません。習ぶ側も、最も知りたいであろうことだとは思いますが、微調整するのは、毎日の最も音型がシンプルなエクササイズ(練習)のときに、自分自身でやなければならないことであって、これは指導者まかせにできる問題ではないのです。


親指を手掌に潜り込ませずに上手く使うためには、腕(前腕+上腕)の役割も大きいと言えます。スケールでの親指の打鍵の際には、言葉での説明では伝わりにくいですが、親指の打鍵よりも先にその場所へすばやく移動させ調整します。親指の打鍵動作が適切にできるような位置へ、親指の動きを先導するようなイメ-ジで(親指が打鍵しやすい位置へ)先に持っていくという感じです。ここで重要なのは、親指の方から、打鍵する場所に親指が移動するのではなく、親指がその音を弾くための位置へ来るように骨格(前腕+上腕)の動きがしむけるという具合です。別のいい方をすると、親指が自然にその場所に下りる、つまり、解剖学的な観点で考え方を少し変えてみることで、弾きにくかったスケールの親指の運びの部分が、スムーズに動くかもしれませんので、視点を変えて練習に取り入れてみてはいかがでしょうか。


スケールを題材にして、ゆっくりの練習で「右手:3の指(中指)から親指、4の指(薬指)から親指」のパターンを繰り返し微調整を絶えずしながら、最も適切な場所はどこか?を探し当てる練習を行ってみてください。この動きは、特に4の指(薬指)から親指の動きの場合には、見た目の動作が大きくなりますが、動きに無駄がなくなり、ポジションの移動がスムーズにできるようになり、速度が上がるにつれて、無駄な動作はなくなり、次第に動きは小さくなっていきます。親指の運びの技術の習得の際には、次のことに留意してみてください。「手首の高さ、前腕、上腕の位置、肘の向き」を必ず音楽性を考慮した上で微調整を行ってください。

もし、親指が暴れ回る場合には、3番(中指)ないし4番(薬指)を今までより鍵盤の打鍵の位置をわずかに奥の方にずらしてみてください。

 


 セラピスト林美希





著書「よくわかるピアニストからだ理論」(出版社ヤマハミュージックメディア)の中で解剖学について執筆させて頂きました。ピアニストの方やピアノ指導者、ピアノ研究家、熱心なピアノ愛好家、調律師等皆様のお役に立てれば幸いです。

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